ストリートピアノ演奏中によくある状況とその対処法:安心して弾くための準備
ストリートピアノでの演奏に興味をお持ちの方の中には、ブランクがあり自信が持てない、人前で弾くことに抵抗があるといった方もいらっしゃるかもしれません。ストリートピアノはオープンな場所に設置されているため、予期せぬ状況に遭遇することも考えられます。しかし、あらかじめいくつかの状況を知り、その対処法を把握しておくことで、不安を軽減し、より安心して演奏を楽しむことができます。
ストリートピアノ演奏中に遭遇しうる状況
ストリートピアノは自宅や練習室とは異なり、多様な環境に置かれています。そのため、以下のような状況に遭遇する可能性があります。
- 他の人が演奏している、または待ち行列ができている: 人気のある場所や時間帯では、すぐに弾けないことがあります。
- 周囲の騒音: 駅や商業施設など、場所によっては人の話し声、BGM、交通音などが大きく響くことがあります。
- 鍵盤の状態が想定と異なる: 設置場所の環境や利用状況により、鍵盤のタッチや音色、状態(多少の傷や汚れ、稀に音が出にくい箇所があるなど)が異なる場合があります。
- 聴衆が集まってくる、または声をかけられる: 演奏を聴いて立ち止まる方や、感想を伝えてくださる方がいることがあります。
- 利用時間やローカルルールが不明瞭: 案内表示が見当たらない、または分かりにくい場合があります。
- 急な天候の変化: 屋外に設置されているピアノの場合、急な雨や風にさらされる可能性があります。(通常は屋根がありますが、強風や横殴りの雨には注意が必要です)
- 演奏中にトラブルが発生する: 楽譜が風で飛ばされそうになる、緊張で指がもつれる、ミスをしてしまうといったことがありえます。
状況別:落ち着いて対処するためのヒント
それぞれの状況に対し、以下のような対処が考えられます。完璧に対応する必要はありません。ご自身が無理なく、心地よく演奏できる範囲で参考にしてみてください。
待ち時間が発生した場合
すぐに弾けない場合は、焦らずに順番を待ちましょう。待っている間に、その場所の雰囲気や、他の演奏者の音色を聴いてみるのも良い経験になります。周囲の状況を観察することで、いざ自分が弾くときのイメージトレーニングにもなります。
周囲の騒音がある場合
ストリートピアノの音は周囲の音と混ざり合うのが自然です。多少の騒音は気にしすぎず、演奏に集中することを心がけましょう。集中が難しい場合は、気持ちを切り替えて、その環境の中で自分の音を出す練習だと捉えることもできます。無理に大きな音を出す必要はありませんが、ピアニッシモが聴こえにくい場合は、少し音量を意識することも有効です。
鍵盤の状態が想定と異なる場合
弾き始める前に、軽く鍵盤に触れてタッチや音色を確認してみましょう。もし特定の鍵盤の調子が悪そうであれば、その箇所を多用する曲は避ける、あるいは試し弾きで確認するなどの対応が可能です。多少の状態の違いは、ストリートピアノならではの特徴として受け止め、そのピアノの個性に合わせて演奏するのも一興です。事前に場所ごとの特徴を調べられる場合は、参考にすることもできます。
聴衆が集まってきた、声をかけられた場合
演奏を聴いていただけていることは、素晴らしい機会です。しかし、人前が苦手な方にとっては緊張の原因となるかもしれません。必要以上に意識せず、目の前の鍵盤に集中しましょう。演奏後に短い会釈をすることで、感謝の気持ちを伝えることができます。もし声をかけられた場合は、簡単な応答で十分です。無理に長話をする必要はありません。「ありがとうございます」といった一言でも、気持ちは伝わります。
利用時間やローカルルールが不明瞭な場合
設置場所に利用時間やルールが明示されているか確認しましょう。見当たらない場合や不明な点がある場合は、商業施設や駅のスタッフの方に尋ねてみることも可能です。確認が難しい場合は、念のため短めの時間(例えば10分程度)で演奏を終えるように計画しておくと安心です。
急な天候の変化があった場合(屋外設置)
屋外に設置されたピアノは、多くの場合屋根の下にありますが、風向きや雨の強さによっては濡れる可能性があります。演奏中に雨が降り出したり、風が強くなったりした場合は、速やかに演奏を中止し、ピアノが濡れないよう配慮することが重要です。(多くの場合、カバーなどが用意されています)演奏前に天候予報を確認することも大切です。
演奏中にトラブルが発生した場合
楽譜が乱れたり、緊張でミスをしてしまったりすることは誰にでも起こり得ます。完璧な演奏を目指しすぎず、「ちょっと間違えても大丈夫」という気持ちで臨みましょう。もし演奏が止まってしまっても、慌てずに落ち着いて楽譜を見直したり、深呼吸をして仕切り直したりすれば問題ありません。周囲の人は、あなたの演奏そのものを楽しみにしていることがほとんどであり、小さなミスを厳しく評価することはありません。
事前にできる準備
演奏中の「困った」を減らすために、事前に準備しておけることもあります。
- 場所の下見: 可能であれば、事前にストリートピアノの場所を訪れて、雰囲気、人の流れ、周囲の音、ピアノの状態、ルール表示などを確認しておくと良いでしょう。サイトの設置場所情報や、他の方のSNS投稿なども参考になります。
- 簡単な曲の準備: ブランクがある方や久しぶりに人前で弾く方は、弾き慣れた曲や、多少の環境変化があっても対応しやすいシンプルな曲を数曲準備しておくと安心です。短い曲や部分的な演奏でも十分に楽しめます。
- 心構え: ストリートピアノは発表会ではありません。「楽しむこと」を一番の目的にしましょう。完璧な演奏でなくても良い、多少のことは気にしないという心構えが大切です。
- 持ち物: 楽譜は必須ですが、必要であれば小さめのタオル(鍵盤を拭くためや手汗対策)、飲み物なども用意しておくと快適です。
まとめ
ストリートピアノは、誰もが気軽に音楽に触れられる素晴らしい機会を提供してくれます。予期せぬ状況に遭遇する可能性はありますが、それらはストリートピアノならではの面白さでもあります。本記事で紹介した状況や対処法を参考に、少しの準備と「なんとかなる」という気持ちを持って臨めば、きっと安心して演奏を楽しむことができるはずです。ブランクがある方も、人前が苦手な方も、ぜひ一歩踏み出して、ストリートピアノの世界に触れてみてください。